Christmas Night
あれから3週間近く過ぎた。
基地視察のお供も後一箇所だけ。
イカルスの天文台に居る真田さんとも久しぶりに会うことが出来る。
ヤマトのこと、聞くことが出来るだろうか。
兄の古代参謀はこのイカルス視察の後サーシャに会いに行くらしい。
そのための荷物をここへ先に送っておいたようだ。
その中には先日かって渡しておいたサーシャへのお土産も入っているようだし、
サーシャに直接渡したかったけど今回は無理みたいだな。
次のときはユキと一緒に会いに行けるといいのだけれど……
そんなこと考えていたら後ろから声をかけられた。
「よう、古代。久しぶりだな、今回は守のお供だってなぁ。」
面白そうに笑いながら近づいてくる。
「真田さん、お元気でしたか?たまには戻ってきてくださいよ。
兄貴の面倒を見るのも疲れてしまって……
「この前もしっかりからかわれたんだってな。
今、守から聞いてきたよ。いつまでたっても結婚しないからだよ。」
「そんなこといわれても……」
口篭ってしまった。
「まぁ、あんまり考え込むな。
それより、腹は減っていないのか?
そろそろ昼飯なんだが、一緒にどうだ。」
「そうですね、そういえばおなかも空いてきたなぁ。
ここのお勧めは何ですか?」
「食欲があるんなら何でもうまいぞ。」
そういって笑いながら案内してくれた。
食事を済ませ、基地の中を案内してもらっていると小さな子供の声が聞こえてきた。
「真田さん、この基地には子供もいるんですか?」
突然変な質問をしたのだろうか、真田さんがビックリして振り向いた。
「あぁ、既婚者もいるからな、就学前の子供を連れてくる家族もいるぞ。
そこがプレイルームになっているんだ。覗いて見るか?」
真田さんの指した方向を見ると、かわいらしい絵の描かれているドアが見えた。
近くによって見ると数人の子供たちが遊んでいた。
「プレイルームって言うより体育館みたいなところですね。
でも、転んでも痛くないようになっているからやっぱり遊び場なんですね」
部屋の隅のほうでにこやかに笑っている兄貴の姿が見えた。
何であんなところにいるんだろう?
不思議そうに眺めていると
「時々守もここへ来ているからなぁ。
なかなか会えないサーシャのことを思い出しているんだろう。
このあと会いに行くって言っていた気がするぞ」
「ここで僕と別れて会いに行くって言っていましたよ。
近くにいるなら会いたいって言ったんですけど……
今回はあきらめろ、の一言でした。
それで、プレゼントだけでも渡してもらうことにしたんです」
「それであんなに大きな荷物をイカルスに送りつけてきたのか」
しかたないなぁと、言う顔をしている真田さんがいる。
「兄貴も早くサーシャに会いたいんでしょう」
そういってその場を離れることにした。
明日には地球に向けて出発することになっている。
早く会いたいよ、ユキ。
久しぶりの地球。
参謀から預かっていた報告書を提出した時点で休暇になった。
ユキはまだ仕事だろう。
荷物を持ち自宅へと急いだ。
荷物を解き、ユキの帰宅時間の確認をするためメールを出しておく。
しばらくするとユキからの返事が来た。
帰りに待ち合わせをして食事にでも行くとしよう。
その前に……
あわてて車を出しユキを迎えにいく。
いつもなら時間前に着いているはずなのに、自宅を出る時間が遅くなってしまった。
ユキがいると出来ないことをちょっとしていたからかなぁ。
ぎりぎり間に合ったみたいだな、まだユキの姿は見えないし……
ほっとしたところでユキが出てきた。
こっちに気づき走ってくる姿が見える。
「古代君、お帰りなさい。迎えにいけなくてごめんなさい……」
最後のほうは小さな声になっていた。
「ただいま。仕事が忙しいんだろう?
仕方がないよ。それよりおなかが空いているんだけど、どこかへ食べに行こう」
車のドアを開けユキを乗せた。
車の中から外を見ていたユキが、
「クリスマスが近いから綺麗に飾り付けられているわね。
古代君、お休み取れたの?」
「明日一日休み。その後は、今回視察に行った基地の状況の報告書作り。
また暫くは、地上勤務だよ」
食事の間に今回の仕事のこと、イカルスであった真田さんのこと、
そのイカルスに家族に連れられたかわいらしい子供たちのことなどを話した。
24日当日も二人とも仕事で忙しく動き回っていた。
仕事が片付いたのが午後5時。
ユキのほうはと思っていたところにメールが届いた。
明けてみるとまだしばらくかかる様子。
先に帰宅することと、終わりしだい迎えに来るとメールで送信して足早に部屋を後にした。
官舎へ戻る途中頼んでいたものを受け取り自宅でユキからの連絡を待つ。
6時30分ごろには出られると言う連絡が入ったので時間を見計らって
防衛軍の本部の前に車をつけた。
ちょうどユキが本部から出てくるところだった。
「おまたせ。今日はどこへ連れて行ってくれるのかしら?」
車に乗り込むなり聞いてくるユキに
「ホテルのレストランを予約してありますが、いいかがでしょうかお姫様」
「ホテルのレストランに行くのなら、このままではいけないわ。
着替えを取りに自宅へ戻りたいんですけど……」
最後のほうは小さな声で訴えていた。
そんなユキが面白くて
「着替えなら用意してありますよ。
時間もないのでこのまま向いますから」
と、ウィンクをひとつ彼女に送る。
エアカーを走らせホテルにチェックインする。
予約してあった部屋に荷物を運び入れ、ユキにドレスを渡しながら、
「はいこれ、ドレスに合わせて見たけど……」
と言って、ユキの手の中にアクセサリーの入っている箱を渡す。
そっと開けてみたユキは
「いつの間に……だってこのチョーカー既製のものじゃないでしょう?
それに、ドレスと合わせたって……」
ビックリしているユキをそっと抱き寄せて
「この前のドレスに合わせてみたんだ。
前に着たときはアクセサリー着けてなかっただろう?
ユキを綺麗の飾りたかったから…
ちょっと兄貴にも相談したりしてね。
昔の知り合いにアクセサリーのデザインをやっている奴を
知っていてから相談に乗ってもらったんだ。
それに、この前のままのドレスっていう訳じゃないよ。
さあ、早く着替えておいでよ。ディナーに遅れてしまうから……」
ユキをせかせた。
しばらく待っているとドレスに着替えたユキが現れた。
少し恥ずかしそうに立っている。
「古代君、このドレスの上にこれを着るの?」
不思議そうに尋ねてきた。
「ユキのほうが詳しいと思ったんだけど…
ドレスの重ね着みたいなものだって店の人が言っていたけど」
ユキが手に持っているものは、シルクオーガンジーで出来ているドレス。
重ねてきると下に来ているドレスのアクセントになっていた。
「兄貴に聞いたらね、そのドレスは、重ねて着れる物だったみたいなんだ。
だからドレスを買った店に問い合わせてみたんだ。
違う雰囲気のドレスも楽しめるかなって思ってね」
ユキの顔がほんのり赤くなっている。
「さあ、早く食事に行こう。お腹いているんだろう?」
「そういえばお昼あまり食べてなかったわ」
二人で部屋を後にする。
レストランはカップルでいっぱいだった。
席を予約してあったので直ぐに食事が運ばれてきた。
クリスマス料理なのだろう。見た目も女性好みに盛り付けられている。
料理が運ばれてくるたびに目をきらきらと輝かせているユキの顔を見ていると、
「何かついてる?」首を傾げてたずねてくる。
「いや、いつ見てもユキは色気より食い気なのかなぁって思ってね」
「いいでしょ。美味しいもの大好きなんですもの!
それより古代君はどうなの?お食事美味しくない?」
「ユキと一緒に食べられればどんな料理だって美味しいよ。
特に、ユキの手料理ならね」
冗談とも思えないことを言ってしまった。
「どうせ、私の料理の腕は余り上手じゃありませんよ!」
ちょっと脹れているユキに
「そんなことないよ。仕事をしながら料理の勉強していたんだろう?
俺としては手料理を食べさせてくれるのが一番なんだから。
こんなイベントのときくらいは着飾ったユキを見ながら食事するのもいいものだよ」
こんなたわいもない話をしながらクリスマスの夜は更けていった。
食事を終えて部屋の戻ると部屋のベルが鳴った。
ドアのところにはボーイがワインもって立っていた。
「こちらのお部屋にワインをお届けに参りました」
ワインを受け取って部屋の中に戻る。
「兄貴からクリスマスプレゼントでワインが届いたよ。
お風呂に入ってからもう一度飲みなおそうか?」
「それじゃぁ古代君、お先にどうぞ。私は後から入るから…」
ユキにそう言われて先に入ることにした。
一日の仕事の疲れと汗を流してからあがる。
バスローブを羽織ユキの声をかける。
「お先に。ユキも入っておいで、疲れが取れるよ」
僕の言葉を聴いてバスルームへ向う。
その間にワインとグラスを用意する。
ワインのラベルを見ようとして、トレイの上にメッセージカードがあるのに気づいた。
カードを開いてみてみると中には、
『ワインのラベルは先日のパーティーのときに写したお二人の姿にしました。
今回は赤で見本を作ってみました。味のほうはお勧めですよ。南部ワイナリー』
そこに、同じくバスローブ姿のユキが現れた。
僕の唖然としている姿を見て
「古代君、どうしたの?何か悪い知らせ?」
手に持っているカードをユキに渡すと
「えっ、何これ?」といったまま同じようの固まってしまう。
しばらくそのままだったのだけれど、どちらともなく笑い出してしまった。
「うふふふ……」「あははは……」
顔を見合わせて
「まったく何を考えているんだろうね。
兄貴まで面白がってやったのに違いないけど、
今度一緒の勤務になったらこの仕返しをしてもいいかな?」
ちょっとおどけてユキに聞いてみると
「ほんと、私も仕返ししたいわ。
でもねぇ、仕返しが倍以上にならない?守さんの場合……」
「その時はユキも一緒だからね」
ウィンクひとつ投げかけてグラスにワインを注ぐ。
「でも、このラベルを貼ってあるワイン何本作るつもりなのかしら?」
「それは、南部にしかわからないんじゃないかな?
島たちにはもう渡してあると思うよ」
グラスをユキに渡す。
一口、口に含んで
「さすが南部お勧めのワインだね」
「でも、あまり飲み過ぎないでね。明日も仕事があるんですからね」
そう言いながら僕の脇に座る。
「そういう君だって仕事があるんだろう?
そのくらいにしておいたらどうなんだい?
食事の時だって結構飲んでいたみたいだけど……」
ユキの持っているグラスを取り上げた。
「あんっ…もう少し飲みたいのに……そういう古代君だって…」
それ以上の言葉を言わせないためにキスをひとつ。
グラスをサイドテーブルに置きもう一度抱きしめる。
「せっかくのクリスマスの夜に酔っ払ってしまうのは勿体ないと思ってね。
ここしばらく忙しかったからユキの相手もしていないし……
夜は長いと言っても明日の仕事に影響しない程度にね」
そう耳元で囁いてみると、
「そんなこと……しん・じ…」
それ以上言わせないように口付けを繰り返す。
そのままベットへ横たえてバスローブの紐をそっと解く。
明かりを落とした部屋の中でユキの白いからだが浮かび上がる。
そっと口付けを繰り返しながらユキの肌をなぞっていく。
首筋から丸いふくらみへ、触れるたびにユキの体が反応する。
ふくらみからその下へと……
白い肌に小さな花をちりばめながら……
お互いの気持ちを確かめ合いひとつになるために……
ひとつになれる幸せがいつまでも続くことを祈りながらクリスマスの夜は更けていった。
いつの間にか、気だるさを残してお互いを抱きしめるように眠りについていた。
夜中に目を覚ましたユキの悪戯にも気づかないほどぐっすり眠っていた。
起き抜けのシャワーの後鏡を見てビックリ。
「おい!ユキ!!何でこんなところに後を付けるんだよ。
制服でも隠れないじゃないかぁ!!」
バスルームから大声で怒鳴ってしまった。
「あら、人のこと言えないでしょ!
古代君だって結構きわどいところに付けてくれたんだから、おあいこよ!」
しらっと答えるユキの襟元のスカーフを外して、
「じゃあ、これはお返し!」
といってスカーフに隠れるか隠れないかの所にキスマークをひとつプレゼント。
こんなことばっかりしていていいのだろうか?
皆さんどう思います?
END
「ワインのラベルは先日の車の中の
二人のキスシーンです」by相原
「ワインは家のお勧めワイナリーから
分けていただきました」by南部
「そんな写真何枚持っているんだぁ!!
南部、相原、没収破棄してやる」by進
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